

私は医療職として働いた時間が長く、とくに大学病院で働いている時期が一番長いのですが、医療の世界ではEBM(Evidence-Based Medicine)といって、根拠のある医療を実践することが十分浸透しています。「根拠のある」という部分がエビデンスという訳語にあたります。つまり、治療効果が明らかになっている治療を実践しましょうという考えです。私が学生の頃の数十年前では、この概念はありませんでした。医師の個人的経験に基づく医療から、エビデンスに基づく医療に変わってきた経緯があります。
今年から教員として働いていますので、教育に関する本をいくつか読みました。衝撃を受けた本が、中室牧子先生が書かれた「学力」の経済学です。いろいろ書きたいところですが、要するに、日本の教育は、エビデンスに基づいた教育がされてこなかったということなのです!教育効果が証明されているかどうかもわからない方法で教育をしている!本当に驚きです。医療の世界では、エビデンスはいまや常識となっていることが、教育の世界ではエビデンスに基づく教育は常識ではないのです。
教員1年目として、静かに粛々と仕事をしてきました。100人の学生を一斉授業で教える場合、100人もいれば、理解力のある学生からそうでない学生がいるわけで、どのレベルの学生にフォーカスして講義をすればよいか迷うことがわかりました。「『学力』の経済学」は、一つの手がかりを提示してくれていました。
習熟度別クラス編成は、費用対効果の高い教育方法であると!
来年度は、この教育方法を導入してエビデンスに基づく教育を行い、学生に価値ある変化をもたらしたいと思います。